世界の果てまでキミと一緒に。
「わぁ!総一郎(ソウイチロウ)さんの息子さん?カッコイイ!でも彼女とご一緒なのね」
父親の隣にいた女は鼻にかかる猫なで声でそう言うと、桜子の方をチラッと見た。
キツイ香水と鼻にかかった声で気分が悪くなる。
目障りだ。
早く俺の前からいなくなってくれ。
この2人に、そんな思いが通じるわけもなく、口に出して言えるわけもなく……。
俺は女に自己紹介や名刺を渡す気にもなれなかった。
「こちらは千尋の彼女か?」
父親の目線の先には俯いた桜子がいた。
「水瀬夫婦の……」
「そうか。この子が……」
そんな目で桜子を見るんじゃねぇよ。
桜子は、親父の隣にいる女とは違うんだよ。
「君、名前は?」
「み、水瀬、桜子、です……」
俯いていた桜子が顔を上げて、父親を見て小さな声でそう言った。