世界の果てまでキミと一緒に。
優しい顔――。
その言葉が俺の胸に突き刺さる。
俺にそんな事を言ったのは桜子が初めてだ。
親にも長年一緒にいる藤堂にさえ、そんな事を言われた事はなかった。
桜子が思っているほど、俺は優しい人間ではない。
優しい笑顔が見せれるほど、出来た人間ではない。
でも桜子は……。
そんな俺に対して、優しい顔だと言ってくれた。
桜子の笑顔が、言葉が、俺の冷え切った氷のような心を溶かしていくようだった。
俺は桜子の隣に並んだ。
このホテルからの夜景なんて見慣れているはずなのに。
いや、桜と同じで今まで全く興味がなかった。
こうして桜子と並んで夜景を見ていると俺がいて、見慣れた夜景が凄く新鮮に思える。
隣に並んだ俺に一瞬、驚いた表情を見せた桜子は、またすぐに夜景に目を移した。