甘いkissを君にあげる
ザワついてた教室の音も聞こえない。
私だけみんなと空間が違うみたいに。
季節はずれの鳥肌が私を襲う。
「はじめまして。松井有華です♪」
聞こえない。
これは夢。
だから安心していいんだよ、私。
これが現実なハズが無い。
松井有華なんて私は知らない。
これは全部全部偽りなんだもん。
「――つ、夏月!!」
「‥‥?」
なに?
夢が覚めたの??
「大丈夫〜?真っ青だよ〜??」
「だ、大丈夫、だよ??」
「夏月、汗すごいけど大丈夫なの?」
「へ、平気!!」
「そ―??‥あ、有華ー!!」
え?
「はぁーいっ」
「この子、江河夏月!」
「へぇー‥可愛いね♪」
その笑みを見た瞬間、これは現実って突き刺さった。
「よろしくね?夏月ちゃん♪」
「うっ‥‥‥」
吐き気が体中を襲う。
有華を無視して走ってトイレに向かう。
幸いトイレに人がいなくてよかった‥‥。
「ゲホッ、ゲホ‥‥っっ」
消えたい。
私の居場所が
崩れ落ちる。
音を立てて‥‥‥。