わかれあげまん
「あ、…たし…帰るよ…。」
「……。」
「やっぱ、ここに居ちゃだめ、だし。…」
「何で?」
「な、…なんでって、…」
焦燥と困惑満面に見上げた哉汰は、真逆にひどく落ち着いていて、色っぽい微笑さえ浮かべていて、柚の胸がまたドキンと跳ねあがる。
泳がせた目を外したのをいいことに、哉汰の指がさっきよりも無遠慮に頬にはっきりと触れてきた。
頬からさえ、ドキドキが伝わってしまいそう。
柚はぎゅうっと目を閉じ、瞼を震わせた。
あたし今きっと、いけないことをしてる。
誰かを傷つけたくなんてない。
「フ。」
ため息にも似た哉汰の笑みが耳を掠めた。
「まったく。ほんと分かりやすいな。あんたって。」