わかれあげまん
聞いたらきっと、昨夜藤宮くんが泣いていたわけが分かるよね?
覚悟を決めたように柚はちんまりと正座した膝先を、クルリと哉汰の方に向けた。
やがて哉汰は目を細め遠くを見つめるような表情のまま話し出した。
その内容は、柚の想像を遥かに凌駕するものだった。
「俺とルゥとの出会いは最初から仕組まれてたんだ。」
「え・・・」
「親父の仕業だった。…有名なイタリアの建築家であるルゥの父親に、俺を引き合わせるために。…」
哉汰の横顔を愕然と見てそして。
「…どうして、…そんなこと?」
「親父はイタリアにある彼の建築事務所に俺を送り込む気だった…。ルゥの父親も、日本屈指の建築デザイナーである親父の血を分けた俺をクルーに抱え込みたかったんだ。」
哉汰はゆっくりと柚に視線を合わせ、寂しそうに笑った。
「そのために、…ルゥを日本に送り込み、…俺に引き合わせたんだ。」
そん、な。…
「ルチアちゃんは…それを最初から知ってて、藤宮くんに近づいたの?」
微かに声を震わせながら、柚が尋ねると。
哉汰はそうだと、静かにうなずいた。