心と、音で。─1年生編─
第1章 吹奏楽部、始動

入学式

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◇◆◇2013年4月9日◇◆◇


【杏里side】


──朝8時15分。





ピロロロロ───





福間駅のホームに、電車の発車アラームが鳴り響く。





ダッダッダッ…





階段を駆け降りる音。


『扉が閉まります。ご注意下さい』


アナウンスが流れる。それと同時に階段を駆け降りる音も激しさを増す。


「わーっ!乗ります乗りますっ!!」


私、北沢杏里はアナウンスに向かって叫ぶ。


真新しいブレザーはまだ体に馴染んでないようで、少し動きにくい。


私は階段を一気に駆け降りると、一番近くにあった扉の中に飛び込んだ。




プシューッ





私が電車内に飛び込んだ瞬間、扉が音を立てて閉まった。


私は扉のすぐ横にあった手すりにつかまると、ゼェゼェと呼吸を整え始めた。


「ま、間に合った…。入学式に間に合う最後の電車…」


そう、今日は高校の入学式。この電車に乗り遅れると、入学式に遅刻してしまうところだった。


ある程度呼吸を整えた私は、どこに座ろうか、と辺りを見回した。すると私は、見覚えのある4人が、4人用のシートに座っているのを目にした。


4人のうちの黒髪のポニーテールの女の子が私に気付いたらしく、「おいで」と言うように手招きした。


私は4人が座っているシートへ移動した。


「杏里、おはよ!」


黒髪のポニーテールの女の子は手を振りながら言った。


「由希(ユウキ)!おはよう」


この子は西藤由希。私の親友で小学生の頃からの幼なじみ。


私がヒラヒラと手を振ると、由希の隣に座っていた男の子が、私に「よっ」と声をかけた。


「あ、陽向(ヒナタ)、おはよう!今日は陽向たちも一緒なんだね」


「おはよ。さっきホームで西藤に会ったからさ、ついでに一緒に行こうかってことになって。それより杏里、凄い髪」


爽やかな笑顔が印象的な粕屋陽向は、私のボサボサの髪を見ながらくすくす笑った。


「あ!ひどーい」


私は手ぐして髪を整え始めた。


「ごめんごめん。その様子だと結構走ったろ?疲れただろうから、ここに座りな」


そう言って陽向は、自分が座っていた座席を立った。


「ありがと、陽向!相変わらず優しいね」


私がそう言ってシートに座ると、陽向は少し赤くなった。


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