心と、音で。─1年生編─
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まずは、ケースの表面を拭くことから始まった。


「誰か、窓開けて」


広が咳き込みながら言った。
楽器ケースに付いた8年分の埃は、少し動かせば宙に舞い上がる。


私は楽器庫の窓を開けた。


まだ少しひんやりとした春風が、優しく私の頬を撫でる。


東海高校には、フルートが4本とピッコロが2本あった。


私は今、計6本の楽器の状態確認をしている。


一体何年前の楽器だろうと思うくらい黒ずんだものや、ほとんど使われていないものもあった。


もう完全に使えないだろう、という楽器もあった。


確認を終えた結果、フルート2本を除き、修理に出せばまだしばらくは使えそうだった。


意外と早く終わってしまったから、今は確認を終えた楽器のメンテナンスをしている。


他の人たちはというと…。





あすかは一人でトロンボーンとバストロンボーンの状態確認をしていた。


あすかがあるトロンボーンを吹いた時…。





べちゃっ





緑色の不気味な物体が、ベルから勢いよく飛び出した。


「きゃぁぁぁぁぁっ!!!!!」


あすかは甲高い悲鳴をあげて、そのままトロンボーンを抱えて手洗い場へと走って行ってしまった。





由希はソプラノサックスからバリトンサックスを、広は一応クラリネットも吹けるからクラリネット族すべての状態確認をしていた。
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