心と、音で。─1年生編─
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「で、280点ってどこ情報なの!?」


「塾の先生情報。だってトップはうちの塾のヤツだから。しかもそいつ、数学満点だし」


「ホントに!?ヤバッ!!」


「てか力、お前トップが誰か知ってんのかよ?」


「まぁね。でもみんな知らないヤツだよ?中学校も違うし。まぁ、入学式までのお楽しみってことで」


そう言って力は話を終わらせた。

気がついたら私たちは、もう東海高校の門の前に来ていた。


正面玄関には大きな掲示板があり、沢山の新入生で溢れていた。


「あっ!あれ、クラス編成表じゃない?」


由希が掲示板を指差した。陽向は目を細めてじっと掲示板を眺めた。


「…っぽいな。でもこっから見えねぇ。人多すぎてこっからは確認出来ねぇし…。ってことで」


陽向はニヤリと笑うと、由希の背中をバンッと叩いた。


「よし、サムライ行ってこい」


「サムライ言うな馬鹿!っていうか、何であたしなの?」


「お前よりは馬鹿じゃねーよ。こん中で一番小さいのお前じゃん?だから、あん中潜って掲示板見てきてくれよ」


「人を馬鹿にしやがって…。いいよ!見てきてやろうじゃん!」


由希は陽向を睨むと、ズンズンと人混みに紛れていった。


「西藤って意外と使えるな」


陽向はクスクスと笑った。私は、そんな陽向に冷たい言葉を放った。


「…陽向、最低。」


「わー!!ごめんなさいごめんなさい!!」


一瞬でトゲを刺された陽向は、私に必死に謝るのだった。


そんな私たちの様子を見ていた広と力は、2人でゲラゲラと笑っていた。


少し経ってから由希は戻ってきた。


クラスは8つあった。力が1組、私と広が3組、陽向が4組、由希が6組。


「僕は杏里と同じクラスか」


「だね!良かったー」


私と広は、ほっと胸を撫で下ろした。










今は入学式。新入生全員は、体育館に並べられたパイプ椅子に座っている。


もちろん、入学式の吹奏楽の演奏はなく、CDから流れる音源で式が進んでいった。


式典で吹奏楽の演奏がないのは、少し寂しい。


私の席の周りは知らない人ばかり。私は妙に緊張していた。


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