心と、音で。─1年生編─
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「で、職員室に入るの?」


「そうだけど」


「なんか入り辛くない?」


あすかのいう通り、入学式の直後だというのに、職員室の空気はピンと張り詰めていた。


前、『東海高校の職員室に入るには、相当の勇気がいる』って広から聞いたことがある。


広曰く、『生活指導と生徒指導担当の教師は、救いようのないくらいの石頭』らしい。


そのせいで東海の先生たちは、校則はもちろん、礼儀や服装に関してしつこいくらい煩く言うんだとか。


そう考えると、職員室に入るのがだんだん怖くなってきた。


私たちが職員室に入るのを躊躇していると、背後から声を掛けられた。


「君たち、新入生?」


振り返ると、そこには若い男性が立っていた。多分、生徒じゃないと思う。


茶色の縁のメガネを掛けた物腰穏やかなその男性は、よく見たら私好みのイケメンだった。


「はい、そうです」


「誰かに用があるなら、呼ぼうか?」


「あ、じゃあ須恵先生を呼んでいただけますか?」


すると男性は、穏やかに微笑んだ。


「須恵は俺だよ。用件は何かな?」


あっさり見つかってしまった。


この人が須恵先生か…。


“凄い先生”とか言うから、もっとゴツい肉食体育会系の怖い先生を想像してた。むしろ須恵先生は、ほっそりした草食文化系の穏やかな先生だ。


…まぁ、それはどうでもいいや。


私たちが確かめに来たのは、今年吹奏楽部が発足するのかどうかなんだから。


「…あの、今年吹奏楽部が出来るって本当ですか?」


「うん、本当だよ。もうそんなに噂になってるんだね」


即答されてしまった。


あすかが言っていたことは本当だったんだ。


東海高校に、吹奏楽部が出来る。これを喜ばずにはいられない。


「君たち、もしかして入部希望?」


須恵先生は私たちに訊ねた。私はあすかを見た。あすかは私と目が合うと頷いた。


「はい!入部希望です」


「そっか!それなら…」










「明日の放課後に音楽室に来てほしいって?」


帰りの電車の中、私は由希に吹奏楽部が発足することを話した。由希は好物のポッキーをぽりぽりと食べている。


「一体何すんの?」


「それはわかんない」


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