ライフ・フロム・ゼロ
「あー、なんかこれ言うとさ、
自分がすっごい性悪みたいで
嫌なんだよね。いや、実際性悪だけど?」
ナカはくすくすと笑いながら
煙草の火を消した。
苦い匂いが鼻をかすめて、
煙が目にしみる。
「……そんな、」
「それでも、聞きたい?」
「……」
「それでも聞きたいかって聞いてるの。
ホラ、聞かなかった方が幸せだった
こととかって、あるじゃん?」
「…ちゃんと、言ってよ」
「へぇ、意外。
あんたにしては、勇気のある選択だと思うよ。
うん、じゃあ言うね」
ナカはまた腕組みをして、
背もたれに深くもたれて私をまっすぐに見た。
目を逸らしたいけど、
できなかった。
その目には、いつも宿っている
きらきらとした光はない。
刺すような、強い眼光に私は射られていた。