ライフ・フロム・ゼロ


そこに恋愛感情などなかった。

私たちは友達だったからだ。


お互いの恋人のことを平気で口にしたりしたし、
それで心苦しい想いをしたことなどない。


だから私たちは愛の言葉を囁きあうことなどしたことがない。

ただ動物的に、欲求を満たすだけの、
子供の遊びのように、あるいは食事のように、
セックスをした。

その関係は、お互い別の大学に進学してからも、
社会人になった今も途切れない。



ヒロに憧れている女友達はたくさんいた。

あーあ、ヒロくんの彼女羨ましいなぁ、
なんて言っているコに、うんうん、
とか相槌を打ちながら私は心の中で笑っていた。


あいつ、ホントは煙草とか吸っちゃうようなヤツなんだけど。

アホなファンの女が裏でなんて言われてるか知ってんの?

ちなみにけっこう乱暴なセックスするんだよ?

だけど首とか背中弱かったりもするし。

アイツのこと目ェハートにして見てるけどさ、
アンタそういうの知らないでしょ?


皆に認められ、憧れられるヒロとセックスすることで、
おそらく私は、自信と優越感を得ていたのだと思う。

小さな人間だとは自分でも思う。
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