ライフ・フロム・ゼロ

やられた、と思った。

そういえばさっきあの女は単語帳を
私の椅子の下あたりに落として、それを私が拾った。
その際にでも抜き取られたのだろう。

筆記の試験で消しゴムがないのはあまりに厳しい。

絶望的な気持ちになりながらもポケットや
ペンケースに消しゴムがないか必死で探っていた。

本当は、持っていないことも、
その姿を見てあの女が笑っているだろうことも知っていた。


情けないことに焦りと絶望で泣きそうになって
唇を噛み、うつむいた。
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