ライフ・フロム・ゼロ
結局私は、大学に合格していた。
私から消しゴムを盗んだ女は落ちた。ざまあみろだ。
ちなみにヒロは最難関の国立大に余裕で合格した。
ま、当然っしょ、と言い切ったのが憎たらしかった。
受験シーズン、黒のストレートに
していた髪を少し切って明るくして、パーマをかけた。
そして入学式、新しいスーツで並べられた
パイプ椅子に腰かけていると、
隣に緊張した面持ちの背の高い女子が座った。
見覚えのあるその横顔。
あの日、私に消しゴムをくれた女子だった。
ふと目があって会釈してみたら、
彼女は不思議そうな顔をしながらぎくしゃくと会釈を返した。
どうやら、私に消しゴムを与えたことなど
彼女は覚えていないようだった。
ひっつめにした黒髪に、薄い化粧。
ぴんと伸びた背筋に、地味なスーツ。
整っているのにどこか華やかさに欠ける顔。
彼女の名前は、樋口清香といった。