ライフ・フロム・ゼロ



樋口清香に、自分から近寄ろうとはしなかった。


彼女と私は所属するグループが違ったのだ。
私はいわゆる普通の大学生だった。
勉強よりも、遊びや交友関係優先、
とまではいかないが、まあまあ華やかなグループ。

彼女は、真面目で目立たない感じの学生だった。
彼女たちはたいてい、私にかまわないでください
というオーラを発していることが多い。


私はしばらく彼女を観察した。


彼女が同じクラスであること、
地方出身であること、
あまり自分から友達をつくろうとするタイプでないこと、
勉強がとてもよくできること、
卑屈なくらいに控えめな人間であることが
短時間のうちにわかった。


なんとなく、本当になんとなく、
私は彼女の観察をその後も続けていた。


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