ライフ・フロム・ゼロ
こうして私たちは、
隣人という関係になった。
なったの、だけれども。
私は、樋口清香を見ていると
イライラした。
周囲が精一杯お洒落しているのに、
ネルシャツにデニムにスニーカーというような
流行なんてひとつも気にしていないようなところも、
休み時間、みんな携帯をいじったり
している時に三島由紀夫の文庫本を読んだりするところも、
女子はみんなグループをつくって行動するのに
移動もトイレもずっと一人でいるところも
周囲はみんな寝ていたりおしゃべりしたり
している授業でも背筋をぴんと伸ばして板書しているところも
先生に名指しでレポートを褒められても
得意げな顔ひとつせずただ恐縮しているところも
電車でお年寄りに席を譲ってしまうようなところも、
お洒落なカフェの前をスーパーの袋をぶら下げて歩いてくようなところも、
全部全部、イライラした。