ライフ・フロム・ゼロ
私生活
先月半ばのことだった。
「ねえサヤ、買い物行こう!」
会社の休憩場所で、向かいでお弁当を
つついていたナカが突然そう言った。
「買い物?」
「うん、秋冬の服とか見に行こーよ!
ひろっちとのデート服とか持ってる?」
「デート服って…いつもと変わらないけど」
「…あのね、サヤ。そんなんじゃふられるよ!?」
「えっ!?」
「確かにサヤの服はセンスいいと思うよ。
でもね、服も髪型も、
何度も言うけど、地味!」
自分の服を見下ろす。
襟の尖った白いブラウスに、
グレーのカーディガン。
ベージュの細身のクロップドパンツに、
ブラウンのローヒールのパンプス。
丈夫さが取り柄の黒のエディターズバッグ。
髪型は鎖骨までの染めてもいない
ストレートを後頭部でベージュのシュシュを使ってまとめていた。