ライフ・フロム・ゼロ
労働者
それからしばらくは、普通の毎日だった。
普通に起きて、会社に行き、仕事をして、
ナカと昼ごはんを食べて、帰って寝る。
キョウの夢を見ることもない。
博之さんは優しくしてくれる。
平穏だ。
平穏よりいいことなんてない。
今朝振り込まれていた給与から、
いつも通り定期預金口座にいくらか移し、
総額を確認してみると500万に達していたのだ。
学生時代の頃からこつこつと貯金してきたけれど、
実家への仕送りや一人暮らし、
奨学金の返済をやってきたことも考えると、
頑張って貯められた方かもしれない。
お金を貯めてやりたいことや
欲しいものはとくになかったけど、
それでも「もし何かあった時」、
私を救ってくれるのは多分、このお金たちだ。