ライフ・フロム・ゼロ

ナカは、溜息をついた。


「サヤはとことん現実的だねぇ…」

「まあ、そうでなきゃやってられないよ」

「面白くないんだから」

「はいはい、ごめんね」

「サヤはもし、3億円とか当たったらどうする?」


いち、じゅう、ひゃく、せん、…
と指を追ってみて、億という桁は
途方も無い数字に思えた。


「大卒の女の平均生涯収入が、
 二億ちょっとって聞いたことある。
 男の人で、二億五千万円ちょっと。」


ナカが首をひねって言った。


「平均生涯収入?」


「一生働いて、貰えるお金のことだと思う」


「一生一生懸命働いて貰えるお金より、
 一回宝くじの一等を当てた方が大きいってこと」


「そうなるね」


「私たちが頑張って生涯で約二億稼ぐとして、
 3億当たれば仕事しなくても普通に死ぬまで
 暮らせて、それでも一億余るってこと?」
 

「まあたぶん、そういうこと」


「なんかやる気なくしちゃうなぁー」


ナカがそう言って、背もたれに深くもたれかかった。
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