ライフ・フロム・ゼロ
「今月分、振り込んでおいたよ」
「…そう」
「うん…」
やっぱり、会話は続かない。
会話の糸口を探していたら、
今度は母から言った。
「そっちは雨が降ってるの?」
雨音が聞こえたのだろう。
「あ、うん。さっきから降り始めた」
「そう。また寒くなるわね」
「うん、そうだね。」
「寒くなると、あかぎれが痛くてねぇ」
「そっか、大変だね」
「ほら、仕事で洗剤とか使うでしょう」
「そうだね、大変だね」
父の借金が発覚するまで専業主婦だった母は、
今は飲食店でパートとして働いているらしい。
「前田さんのとこは年中家にいれるのにねぇ」
「そうだね、母さんは大変だね」
「だって、借金があるから仕方ないもの」
やっぱり、この話になる。