ライフ・フロム・ゼロ


 窓に手を当てる。
 ひやりとした、薄く冷たいガラスの向こうを
 幾筋にもなって水滴が伝って、落ちていく。


「何やってるんだ?」

「雨、見てるの」


 晴れていれば眩しく明るい都市の夜景は
 雨に丸め込まれてしまったのか
 ぼやけて、拡散している。
 それでも美しいと思った。


「お前服着ないの?寒くね?」

「ねえ、明日の夜何してる?」

「あ?まだわかんねえけど」

「ふぅん、そう」

「なんだよ?」


 安いホテルのベッドに膝を乗せると
 ぎっ、と軋む音がした。


「ね、明日も会おうよ」

「は?なんで?」

「いいじゃん、なんとなくだよ。うりゃ」

「わかったから。お前、手ェ冷たいって」




 今夜は、ちゃんと眠れない。

 多分、明日も。

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