ライフ・フロム・ゼロ
雨天決行
「―――う…」
カフカの『変身』を読んでから、
こういう朝、布団から出るのが
怖いように思えることがある。
変な頭痛がして、
吐き気がして、
意識は朦朧として、
四肢に力が入らない。
お前は巨大な毒虫になってしまったんだよ、
そう耳元で言われたとしても
納得できそうな、最悪の
コンディションで迎える朝。
二日酔いなんて、なかなかなることはないのに。
それでも、どうにか上半身を起して、
毒虫にはなっていなかった証の足で
よろよろとキッチンまで向かい、
ミネラルウォーターを一気に喉に流しこんだ。
冷蔵庫の前に座ったまま部屋を見渡す。