ライフ・フロム・ゼロ

あの時ナカを諌めたけど、
本当は安心していたし、
嬉しかったんだと思う。


そもそも深い交友関係を持つのが苦手な性分だ。

ナカが近くにいてくれれば大丈夫、とか
そんな風に思っていたのかもしれない。



「ふわー、買った買った!」


「バイト代飛んじゃったんじゃないの、ナカ」


「いーの!また頑張るし!」


「そう。じゃ、次本屋ね」


「えーつまんなぁい」


「あ、ほらエレベーター来たよ」


建物の側面に設置された
そのビルのエレベーターの
壁面はガラス張りになっていて、外が見える。

高所恐怖症気味の私には少し辛いつくりだ。

到着したエレベーターのドアが開く。


「「あ、」」



二人同時に声が出た。
いつの間にか細い雨が降っていたのだ。
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