ライフ・フロム・ゼロ
だから私は奨学金を受け取り、
アパート近くの飲食店で昼夜バイトをして、

少しでも暇があれば内職をして、
大学の単位はそれでもこぼさずに取り、

傍から見れば苦学生として大学生活を送った。


周囲はサークルに合コン、
学園祭に飲み会と華々しく
遊びまわっていたのだが、
特にそれを羨ましいとも思わなかった。

そこまで遊びに対して
興味は持っていなかったし、
田舎者の私からすれば華やかな都会の
同級生たちは別の世界の住民に見えた。

ゼミや授業が同じの友人もできたが、
みな派手に遊びまわるタイプではなかったのもある。

勉強は面白かったし、
尊敬する先生もいて、
私はそれで満足だったのだ。


私は大学生になってから一度も実家に
帰らなかった。
特に帰ってきなさいとも言われてはいなかったし、
必要な連絡は電話で済ませた。


成人式にも出ず、地元で進学した
高校の時の友人とは
最初はマメに連絡をとっていても
しばらくすればすっかり疎遠になってしまった。

それを寂しいとも思わなかった。
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