西野くんの偽カノジョ




「あのさ…看病してくれてありがと。」



俺は恥ずかしくてそっぽを向きながら言った。



「いいえ、あたしも途中から寝ちゃってましたし。



あたし親から連絡が来てたので帰りますね。」



結衣は帰る準備を始めた。


もう帰るのか…



本当は引き止めてまだ話したいことがあるけど仕方ないな。



「気を付けて帰れよ。…遅れなくて悪いな。」



「全然、お大事にして下さい。


明日までに体調良くなるといいですね。」



結衣はニコニコしながら言った。



久しぶりに笑ったところを見た気がする。



この笑顔がやっぱり好きだ。



「『あの…』さ…」



結衣と重なってしまった。


「何?」



ちょっと冷たい口調だったかも。



「いいえ、先に西野くんが言ってください。」



結衣はオドオドしながら答える。



「いいから。先言って」


俺の話は別に大したことねぇし



強引に結衣に話をさせた。






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