西野くんの偽カノジョ
「嫌っ!お願いやめて…ぐすっ」
こわい…こわい。
好きな人以外にこんなことされたくない。
あたし…男の人の怖さ全然知らなかった。
みんな優しい人だってそう思ってた。
自分の力を最大限に使ってみても、腕から抜け出すことができなくて…
キスだって必死に俯いて逃げることしかできなかった。
きっと顔を掴まれちゃったら絶対にキスされてる。
それだけじゃない。もっと他のことだってされちゃうかもしれない。
あたし、考え方が甘すぎた。
「結衣」
苦しそうな西野くんの声が聞こえてきて、俯いていた顔をあげた。
「うー…ぐすっ」
「分かっただろ?男を甘く見るんじゃねぇ。
むやみやたらに他の男と2人きりに絶対なるんじゃねぇよ。
…ごめんな、でもこうやって男と2人だけになるのは俺だけにしてくれ。」
西野くんはそう言うと、ようやく腕の中から解放してくれた。
「ふぇ…ごめん…なさい。ごめ、『もう謝んな。』」
今度は優しく抱き締めてくれた。
そして、あたしが泣き止むとアイツのにおいが我慢できないからと言ってポケットから何かを取り出すと、シュッシュッとかけてきた。
すぐに嗅いだことのあるにおいがしてきて、何だっけ?と思っていると
西野くんがフッと笑ってあたしにキスの雨を降らすと西野くんの使っている香水がかけられたことに気付いた。