西野くんの偽カノジョ
顔を上げて教室のドアの近くを見てみると、手を上げて「ちょっといい?」と言うハルくんがいて
あたしはコクンと頷いて、席を立つとハルくんの元に向かった。
「おはようございます、どうしたんですか?」
と頑張って笑顔を作ってハルくんに言うと、
「泣きそうな顔してる。2人がいったい何があったか知らないけど
もう一度逃げないで話し合うべきだと思うよ。葵の気持ちもきっと変わってないと思うから。」
ハルくんはニコッと笑うと「はい!」って言ってあたしに西野くんの家に忘れてきた勉強道具を渡してきた。
「…ありがとうございます。
でもあたし…西野くんに
“自分のことをたくさん知ってくれてる西野くんのファンの人とかつばきちゃんと付き合っちゃえばいい!”
って酷いことを言っちゃったんです。だからもう…」
無理なんですって言おうとしたら
ハルくんはフッと笑って、首を横に振ると
「葵はそんなことを言われたって結衣ちゃんを嫌いになったりしないよ。
証拠だってちゃんとある。」
と言って、ハルくんはあたしのノートをそっと開いて見せた。