藍色のキミへ
好き嫌い
ある日のことだった。
子供の泣き声が聞こえてくる。
「宇宙さん、子供が泣いてますね」
「そうですね、見に行ってみますか?なんで泣いているのか、気になりませんか
?」
「でも、足が…」
「私が、車椅子押しますよ?」
あのドラマのせいで、ちょっと怖かったけど中山さんに車椅子を押してもらって泣き声がする方へと向かった。
俺達の病室から、少し離れた小児科病棟で子供は泣いていた。
しかも、号泣していた。
ご飯と薬を、目の前にして。
「僕どうしたの?」
中山さんは、泣いている子のベッドに座り優しく問いかけた。
「お魚不味いから嫌いっ!ご飯食べたくないっ!」
よくある、食べ物の好き嫌い。
ただ、嫌いな食べ物と話しかけた相手がミスマッチだった。
中山さんは、食べたくても魚が食べられない。
男の子は、食べられるけど魚が嫌い。
大きな違いが、そこにはあった。
「じゃあ、お魚以外食べてみない?おいしいと思うよ?」
「…うん」
男の子は、魚以外ぺろっと食べてしまった。
「お魚も食べてみたら?」
「やだっ!絶対食べない!」
「じゃーあ、お姉さんが食べちゃお~」
箸を持って、魚の身をほぐし始める中山さん。
このままいけば、本当に魚を食べてしまう勢い。
「中山さんっ!絶対ダメです!」
中山さんの、手を力いっぱい抑えた。
このまま止めなかったら、手遅れになっていたところだった。
「だって、僕が食べないから私が食べようと思ったんです」
「ダメですって!!中山さん!!」
車椅子の上に座りながらも、必死に阻止する。