藍色のキミへ
「中山さん、みかん食べませんか?」
病室に戻ると、中山さんはもう泣いていなかった。
でも、目は赤かった。
泣いたのが、すぐにわかるような目なのに笑っている。
その笑顔を見るのが、ものすごく辛かった。
「みかんですか?」
「さっき売店で買ってきたんです」
「食べたいですっ、私みかん大好きなんです」
中山さんは、目を細めてみかんを食べた。
アメにしとけば、よかったかなって思ったりもして少し後悔した。
「ちょっと酸っぱいです」
「え?俺のは甘いですよ…、はんぶんこします?」
「じゃあ、半分貰ってもいいですか?」
「どーぞ」
みかんを、半分に割って中山さんに渡した。
中山さんは、おいしそうに全部食べてくれた。
みかんにしてよかったと思った。