藍色のキミへ


「おはようございます、朝ごはんですよ」

看護師さんが、朝ごはんを持ってきてくれたことにビックリした。


「朝ごはんって、自分で取りに行くんじゃないんですね」

「…長沢さん、あなたその足で何言ってるの?あなたは、治るまで持ってきますからね」

看護師さんに、言われて納得。
この足じゃ無理だ。
車椅子には、乗りたくないから。

だって、この前見た刑事ドラマで車椅子に乗っていた人を突き落とす事件を放送していたから。

怖くなっちゃうだろ。

「はい、アオちゃんも朝ごはんね」

どうやら中山さんは、アオって名前らしい。
なんだか、珍しい名前だなと興味を持った。


「ありがとうございます」

看護師さんが、出て行くと中山さんに尋ねてみた。

「中山さんのアオって、どんな字を書くんですか?やっぱ青空の青ですか?」

「深い海の色…、藍色の藍です」


なんだか、面白い例え方をする子だと思った。
藍色って普通に例えられるはずなのに、“深い海の色”って不思議だな…。


中山さんも、ご飯を運んできてもらえるのか。

俺みたいに、怪我をしている様子もなく至って健康に見える。
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