藍色のキミへ


「長沢さん~、電話」


もしかしてと思い、ワクワクしながら電話に出る。


「はい、お電話かわりました、長沢です」

『先日、お手紙をいただいた者です』

「あっ、お電話ありがとうございます」

『いえ…、そのことなんですが是非お会いしてみたいと思いまして』

「本当ですか?」

『娘もそう言っているので』

「ありがとうございます!」


日時も決定して、会う日が近づくたびに緊張していった。

中山さんも、緊張しているみたいだけどそれより、楽しみという気持ちが大きいらしかった。



「なにから話せばいいかわかりません…」

「俺も緊張しちゃって…」


退院したら俺の家に掃除に来るという、約束をしていた日に中山さんが呟いた。



「楽しみなんだけど、打ち解けられるか不安です」

「俺もです、知らない男と仲良くなってくれますかね…」


会話をしてて、ふと中山さんのカバンの上にある不思議な物に気付いた。

ポーチみたいな形をしているけど、それには紐がついていて色もなんだか地味。



「中山さん、それなんですか?」

「これですか?これ、アレルギーの発作が起こった時に自分でする注射です」

「注射……」

「まぁ、発作のときなんか苦しくて打てませんけどね」


笑ながら話す中山さんを見て、胸が痛くなった。



「だから、発作起こしたら宇宙さんが打ってくださいね?」

「わかりました」

「ありがとうございます」

ケースの中には、ぱっと見注射に見えない物が入っていた。
そして、氏名・生年月日・アレルギーを起こす食べ物などが細かく書かれた紙も。


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