君の肌を壊す夜
「…なんで優貴はあたしを愛してるなんて言うの?」
答える変わりに、優貴はそっとあたしに唇を重ねてあたしを強く抱きしめた。
耳をくすぐる吐息に混ざって彼の震える声が聞こえた。
「本当に…覚えてないの?
俺達、結婚の約束までしてたのに…」
消え入りそうな声が泣いていた。
あたしは自分の耳を疑いながら
それでも
あたしの肩に降り注ぐ涙に
呼吸さえできずにいた。
静かな部屋の中で
二人を包む時間だけが止まってしまった気がした。