キミがいた夏~最後の約束~
「ね~ね~そう言えばトビーさん、トビーさんの本名何?」
綾香が自分の携帯電話を操作しながらトビーさんに問いかける
綾香もトビーさんから番号を教えて貰ったようだ
「私、登録名はフルネームにしてるんだよね
飛なんとか?なんとか飛?それとも、もしかして名前!?」
するとその言葉に反応して都さんが笑い出す
「うん、そんな感じで想像するよね」
トビーさんも一緒になって笑っている
ううん、なんか苦笑って感じ
私はそのやり取りに耳を傾けながら、洗ったばかりのコップを布巾で磨いていた
橘先輩は相変わらず、サーフィン雑誌に夢中のよう
「これがバカみたいな話しなのよぉ~」
何かを思い出したようにクスクス笑う都さん
「あ、ちなみに俺の名前は川平章吾って言うんだけど」
「え!全然違う!」
トビーさんは綾香のそんな驚きの言葉を聞いて顔は笑っているけれど、やっぱり瞳の奥は少し複雑な色を滲ませていた
その顔を見て、私も何かあるのかなっと不思議に思ったけれど別段気にすることもなく、グラスを磨き続けていた
「大学時代の話しなんだけどね…」
キレイに磨きあがったグラス
私は話を聞きながらグラスを棚に戻そうとその一つを手に取って持ち上げた
「大学の時に俺が住んでたアパートが…まあ借りてからわかったんだけど
前の住人が飛び降り自殺してたらしくって…」
ガシャ━━━━━━━━━━━━ンッッッ!!!