キミがいた夏~最後の約束~
真実
「私のお母さんは生まれつき体が弱くて…」
私は小さく深呼吸すると、昔を思い出すように静かに口を開いた
室内の静けさとは対照的に、外からは子供達の笑い声が遠くから聞こえてくる
そういえば、今日から夏休みなんだね
「……だから、お母さんは将来的に子供を産める体ではないって言われてたって…」
橘先輩も綾香もトビーさんも都さんも
みんな静かに耳を傾け聞いてくれている
「でもお母さんはお父さんと出会って…恋に落ちて…」
「…美鈴ちゃんが出来たわけね?」
都さんがやわらかな笑顔を向けながらそう言うから、
私はその言葉を聞いて少し笑って静かに頷いた
「お母さん、そんな体なのに迷わず私を産もうと思ってくれたって…」
お父さんが私によくそう聞かせてくれた
「私…それを聞いた時…本当にうれしかった~…」
そう言った私の顔見て、橘先輩もうれしそうな顔をする
私はその顔を一瞥して続けた
「でもね…周りには反対されたって、まあ当たり前だよね…
でも産むと決めたお母さんは、その決意を絶対曲げなかったって……」
「母は強しよ」
都さんがもう一度そう言う
「でもやっぱり無理だった…お母さんの体では出産には耐えられなかった…」
私は少し間を開けると、心を落ち着けるように息を小さくすった
「…お母さんは私を産んで間もなくして…死んでしまった…」
静かな部屋の空気がまたピンっとはりつめる
橘先輩と綾香を見ると二人は納得できないような顔をしていた
二人、同じ疑問を抱いたのだろう