キミがいた夏~最後の約束~




「あとさ…」


「うん?」


更に橘先輩は何か言いたそうに口ごもっている


まだ他に何かあるの?


そういう意味を込めて橘先輩を見つめ返していると



「いや…あの…」


「え?何?」


「あの男…なんで美鈴の手を掴んでたの?」



あの男…?


そう言われて私はさっきの酒屋の彼を思い出す


ああ、あれかぁ~…


橘先輩を見ると相変わらず不機嫌そうな顔



「あれは…」



話そうとして不意に思いついた


そして自分のいたずら心が顔を出す


私は彼に掴まれた手を再びさすりながらニンマリと橘先輩に笑顔を向けた




「秘密ぅ~」



それを聞いた橘先輩の顔が盛大に歪む


してやったり!



「お前!」



橘先輩って本当に心配性


ううん、ヤキモチ妬きでかわいいな~



「あはは、うそうそ~!
私がお店から逃亡しようとしてたから仕事しろ!って捕まえられただけだよ」



そして自分の言葉にハッとして、重要なことを思い出した



「やばい!仕事~!」



あわてて走り出して、テイクオフに帰っていったけれど


綾香にこっぴどく怒られたのは言うまでもない






< 201 / 378 >

この作品をシェア

pagetop