キミがいた夏~最後の約束~
テイクオフ
少し歩いたところに、小さな明かりが見えた
なかなか雰囲気のある、ログハウスのような建物が見える
こんなところにあったっけ?っと思うほど、昼間に見た記憶がない
近づいてみると、そこはどうも喫茶店のようだった
控えめな看板には
"Take Off"
っと書かれている
橘先輩は何の迷いもなくその扉に近づくと、ゆっくりとドアノブを引っ張って中に入っていった
チリリーン―…
ドアノブに付いていた鈴が
懐かしい音色を辺りに響かせる
知らない場所に足を踏み入れることに不安を抱いていた私を、リラックスさせるのに充分な音色だった
先輩に続いて、その独自の空間に足を一歩踏み入れてみる
「おー渚~!お前またサーフィンしてたんかぁ」
すると中から小気味のいい男の人の声が聞こえてきた
私の場所からは先輩の背中が邪魔して顔が見えない
顔を出して挨拶しようかどうか迷っていると、橘先輩はその男の人とすぐに話し出した
「トビーさん、腹減った~なんか食わして~」
「渚に食わせる飯はねぇ!」
「はぁ?」
「はっはっは、最近覚えた物真似だ」
「似てねえ…」
……なぎさ…?