キミがいた夏~最後の約束~
そして続けて私に色々ことを話してくれる橘先輩
「俺がサーフィン始めたきっかけはトビーさんなんだよな」
「そーなの?」
「うん、確か7才ぐらいの時に親父に連れられて海行ったら、トビーさんがサーフィンしててさ
あ、俺の親父も昔サーフィンしてたらしくて、俺の名前もベタだろ?」
橘先輩の声が、にわかに興奮の色を帯びていく
「そん時のトビーさんがメチャクチャかっこよくてさ、もう一目でやられた!」
そういって拳を握って胸の前に引き寄せる
「もう次の日に親父にサーフボードねだって海に出てた」
「すごい…」
「したら、トビーさんに筋がいいとか言われて舞い上がっちゃって」
私はうんうんと相槌をうちながら7歳の橘先輩を想像した
きっと今と同じ顔をしてたんじゃないのかな?
「教えてくれたトビーさんのためにもプロサーファーになりたい」
そう言って私には向かって微笑んだ顔は、きっと7歳の頃と少しも変わっていないだろう
それぐらい無邪気でひたむきな笑顔がそこにあった
でも私はそれと同時にある疑問が頭をよぎる
「家はどうするの?」
橘先輩の家は確か、老舗の呉服屋
家を継がなくていいのかな?
「ああ…まあ俺、ねーちゃんいるしね」
「え?そーなの?」
初めて知る橘先輩の家族のこと
知らないことはまだまだ沢山ある
「最悪、着物着ながらサーフィンって手もあるしな」
「ええ!?」
そう言って二人して顔を見合わせて笑った