キミがいた夏~最後の約束~
屋台がある通りに出ると、誰でもいいから引き留めようと必死で手を前に押し出す
だけど不幸なことに花火の盛り上がりは最高潮
屋台には人はまばら
そしてそのわずかに残っている人も空を見上げるばかりで、こちらに気付く人はいない
「お願い…誰か…助け…人が…人が刺されて…」
声が…上手く出ない
こんな時に!!
そしてそのわずかに出たその声も、花火の轟音と人々の歓声にかき消されていく
どうしよう
どうしたらいい?
私はボロボロと涙を流しながら、それでも手を伸ばし続けていると
ずっと空を切っていた手に暖かな手が突然に重なった
「おい…どうした!?」
私は知っているその低く冷たい声に反応して即座に顔を上げ
その顔を見て、この奇跡に感謝をしてすがり付くように喋りだした
「三池くん…助けて…助けて…」
私は三池くんにしがみつきながら、何度もそう言うと
「しっかりしろよ!なんだよ!」
いつも冷静で焦ったところなど見たことのない三池くんが
今までに見たこともない勢いで、私の両肩を掴んで揺さぶる
ああ…
こんなことしてる場合じゃない…
橘先輩
先輩…
先輩━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━………‥‥
ピーポーピーポ━━━━……
━━━ピーポーピーポー……‥