キミがいた夏~最後の約束~




「は?違う違う、あの人は中学ん時の先輩でたまたまここで研修中で…」


「ホントにあんたは足じゃなくて口をケガすればよかったのにねー」


「都さん…ひでぇ…」



私はそんな橘先輩と都さんのやり取りを聞きながら
都さんが行く途中で買ってくれた花を花瓶にいけようと、病室を出て行った


橘先輩の女性関係が気にならない訳ではないけれど
いちいち気にしていては身が持たない


でも信じてるというのとも違う、自分に自信がなくていつも不安は付きまとうから
聞かないようにしているだけ


「うーん?これでいいかな?」


私はトイレにある洗面台で花瓶に花をいけてから、また病室に戻っていく


淡い色をしたガーベラと霞み草


その色と香りが私の少しモヤモヤした気持ちを癒してくれる気がした


「うーん…いい香り…」




「ちょっと」



そんな声がして自分のこととは思わなかったけれど、私はとりあえずその声の方を見ると
そこにはさっきまで橘先輩と楽しげに話していた看護師さんが立っている


な…なんだろう…


確か中学の時の先輩…


変な緊張感が私を支配する



「あなたって渚の彼女なの?」


「え?」


質問されることはなんとなくわかっていた


橘先輩の周りにいる女の人はいつもそんな目で私を見るから


私はそんな風に聞かれてなんとなくすぐに頷けずにいた





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