キミがいた夏~最後の約束~
「手を離したのはお前のせいじゃない」
先輩、違うよ…
「お前が手を離したことを後悔してるなら、今度は俺が繋いでやる」
そうじゃないよ…
「お前が離してもずっと繋いでてやる」
そうじゃないけど…
でも…
瞬間
橘先輩の手にグッと力がこもると
繋いでいない方の手で抱き締められた
橘先輩の吐息を頭のてっぺんの辺りで感じる
私は広い胸に顔を埋めながら瞳を閉じた
橘先輩に初めて会った時
本当はもう惹かれてた
海の話を聞いた時から
この人はどこか他の人と違うと思ってた
でも好きになってはいけない人だと
迷惑を掛けるわけにはいかないと心で決めていた
先輩はゆっくりと体を離して私の泣きはらした真っ赤な瞳をのぞく
そしてその瞳を愛しそうに撫でながら
先輩の綺麗な顔を私の顔にゆっくり
ゆっくりと近づけた