キミがいた夏~最後の約束~
2つの鈴
ブランコに隣り合う2つの影
手はしっかりと繋がれている
沈黙が心地いいなんて知らなかった
放課後までの重かった気持ちが嘘のように、穏やかな気持ちに塗り替えられている
「とりあえず…」
橘先輩が前を向いたまま口を開く
「ケー番とメアド、教えてもらおうか?」
「持ってません」
私の即答に橘先輩が
『え?』っという顔をする
私はその顔に薄く微笑みながら
「携帯電話、持ってません」
そうもう一度答えた
「え…?マジで?」
「はい」
「今時…?」
「はい」
「連絡する時どーすりゃいいの?」
「綾香とはほとんど毎日あってるし、緊急の時は家の電話が…」
「綾香ちゃんじゃなくて」
「?」
「俺が」
すねたような先輩の顔
それを見ただけで胸がキュンキュンしてしまう
私はどうやら重症らしい