空を見上げる皇帝ペンギン。
それは大丈夫なの。
背の高い周防くんを大勢の中から見つけるなんて容易い。
…でも、周防くんが私を見つけるのは確かに大変かもしれない。
「そうだね。」
「緋睡、俺の下の名前分かるか?」
「…うん?」
周防くんが車にエンジンをかけた。
私も車の免許を取った方が良いのかもしれない。周防くんはバイクも車も両方持ってるって言っていたし。
電車で行くと時間がかかるから。
「藍斗。」
呼ぶと、うん、と納得したような返事が返ってくる。
「忘れてるわけじゃないなら良かった。」
忘れる、わけが無い。
周防くんの声も、ピンとしている背筋も、笑い方も。
誰よりも最初に見つける自信があるよ。