空を見上げる皇帝ペンギン。

急いで後を追うと、周防くんが玄関で靴を履いている。


「周防くん、帰るの?」


私は、寝間着を着ている。冬の夜は寒くて、廊下は暖房の効いている部屋より寒い。

振り返った周防くんと一瞬目が合って、すぐに伏せるように下を見た。何処か、気まずそうに。

待って欲しい。
話がしたい。
抱き締めたい。
抱き締めて欲しい。

私の愛が足りなかったのなら、今までの分をちゃんと補うから。


「じゃあな、緋睡。」


扉が開く。冷たい風が入ってきて、頬を撫でた。




< 157 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop