空を見上げる皇帝ペンギン。
今度は本当に驚いていると、紫暖さんはあっと声をあげる。
「言うの忘れてた、うっかり。」
…うっかりさんらしい。
「じゃあ行ってくる。」と休み時間終了のブザーが鳴って、周防くんがこちらに背中を向けた。
「あたし、周防が中一の時から追っかけしてるの。あれは将来大物になるよー。」
「中一から…。」
「体育祭とか、大会とか、ずーっと。」
紫暖さんの言葉は、私の体を容赦なく貫く。私の知らない周防くんを、紫暖さんは知っていて、私の知ってる周防くんを、紫暖さんも知っている。