ねぇ、そばにいて。


「今日…俺の事捜しませんでしたね」

下の方にいる漣から聞こえた声。


「……ぇ? …ぁっ…ん…っ…」

漣を捜す?


「テーブルの方なんか見向きもせず
バックルームに一直線でした」

「な…ゃぁっ……」

喋りたいのに、漣の舌や手の動きが邪魔をする。



私が店に来たときの話だ。

「…っ…気付いてたの?」


「当たり前ですよ
いつ来るかずっと気にしてんですから」

不機嫌そうに言う、さりげなく甘い言葉。
反応してしまう私の胸をなんとか静めて。



「漣は北条さんに捕ったと聞いたから。変に思われないように気を使ったのよ?」

すっかりあがってしまった息を頑張って繋ぐ。

「………」



「それで機嫌が悪かったの?」

私は再び漣の頭を撫でる。


すると漣は動きを止めて
私を上から抱きしめた。



「……葉月さんが来ると、接客終わった奴ら全員
なにかとバックルームに駆け込むんですよ」

奴らって、他のホストの子達?



「俺だけいつまでも行けない」


「……漣はNo.1だもの。
仕方ないじゃない?」

お願いだから
そんな可愛いこと言わないでよ


「やっと終わってバックルーム覗けば、また銀と朔に懐かれてるし。朔に関しては抱き着いてましたよね。」

「でも私、朔や銀ちゃんがいないと
漣を待つ間退屈だわ」


「…、また銀に煙草もらってるし」

やめられないのよ、煙草。
漣も吸ってるでしょ?


「そもそも、格好がエロすぎる。」

「………」


確かに、薄っぺらく丈の短いワンピースに毛皮のコートを羽織っただけだけど。
ニーハイのブーツを履いてきたから露出はそんなになかったはず。


「露出の面積の問題じゃないんです。葉月さんは仕草もいちいち色気を出すから…

髪だってまだ湿ってる。
ちゃんと乾かしてから来てください」


だって……、急いで行ったのよ?



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