ねぇ、そばにいて。
「妻が倒れた」
そう言った時の元さんの表情は
いつまでたっても忘れられない。
その電話がかかってきたのは
いつものように、仕事帰りに私と食事をしている最中だった。
余裕のない様子で病院に向かう元さんを
私は笑顔で見送った。
浮気されたって、浮気したって
元さんは奥さんのことを愛してる。
それこそが、私が好きになった彼。
なのに、私は苦しくて。
まるで私とは比べられないくらい奥さんを愛しているんだと、きっぱり言われたような。
そこから、帰りたくもない家に向かって一人、よく分からない道を適当に歩いている途中だった。