ねぇ、そばにいて。
「馬鹿ね。
漣はなにも面倒臭くなんてないわよ」
「いえ…昨日は少し調子に乗りすぎました」
「それにしても、少し焦りすぎじゃないかしら。
昨晩アナタに脱がされた私の服は
ベッドにあったはずだけど?」
昨日あのまま意識を手放した私は
相変わらず、漣のシャツのみを着用している。
「…………」
黙り込む漣に、思わずクスッと笑みが零れる。
「……知りませんよそんなこと」
「ふふ」
少し強くなる漣の腕の力に、
忘れかけていた両手のコーヒーを思い出した。
「漣。コーヒーを煎れたのよ」
「あぁ、…ありがとうございます」
私から離れた漣は、困ったように笑いながらカップを受け取る。
私は右手に持ち続けたカップを渡した。
「朝から葉月さんのコーヒーが頂けて幸せです」
さっきまで可愛かったはずの漣は、一瞬でホストに戻ってしまったらしい。
「仕事が身に染みついてるのね」
そんなにナチュラルに褒められて
柔らかい笑顔を向けられて
喜ばない女なんていないだろう。
「………」
漣は少し難しそうな顔をしたけど、すぐにまた柔らかく笑った。