ねぇ、そばにいて。



目を覚ますと、
さっきまで疎ましかった夕暮れの明かりはもうなく、紅色だった空はすっかり黒に変化していた。



数時間前より一段と暗くなった部屋、
数時間前より乱れたベッドの上で、

私の体は逞しい腕に包まれていた。


横からは規則正しい寝息が聞こえる。





「……また、私が先だったわね」



彼の寝顔はもうすぐ38になるとはとても思えないくらい、なんともあどけなく。

私は自然と笑みが零れる。


なにもアレンジされていない貴方の綺麗な黒髪は、掴めばすぐに終わりがきてしまうくらい短くて。



『このくらい短いほうが私好みだわ』


なんて。

いつか呟くように言った私のあの一言で、それから一度も髪型を変えない貴方は本当に愛しい。



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