ねぇ、そばにいて。


彼の髪から頬へと手を滑らせば
ゆっくりと彼の目が開く。



「……また負けたか。」


私の手を上から包む手。

ゴツゴツしているけど優しくて。
大きく、暖かい。


それは、まるで彼そのもの。



「そうね」

私が笑ってみせると、
彼は眉を下げて微笑んだ。


「一度くらい君の寝顔を見たいのにな」


そう言って、そのまま私を引き寄せる。
優しい体温に包まれた。



「だめよ。私の寝顔なんて見たら
元(ハジメ)さん家に帰れなくなるわ」


"悩殺ものなのよ?"


私は誤魔化すように笑う。
すると、



「……そうか。それは困るな」

そう笑った元さんの笑顔があまりに寂しげで。


「…っ……」


自分で言っておいて、私の胸はギシリと嫌な音を出して軋んだ。


でも決して表情に出しちゃいけない。



彼には帰るべき家がある。


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