私は一生、蛍を見ない
いつの間にやら他の弓道部員達が私と雷の勝負を見物すべく、わらわらと寄り集まり、座って私達の方を見ている。さっきまで私の後ろにいた留衣もちゃっかりその中にいる。
まったく…まぁ、このギャラリーもいつもの事なのだが……いっそ見物料、取り立ててやりたい。
ギャラリーなどお構いなしに弓矢を手にスタンバった雷。その隣に私も立った。
「…始め!」
審判役の留衣の鋭い声で私と雷は射位に入った。
矢を番え、弓を引き絞る。
的に集中し
放った。
パァン!
パァン!
二本の矢が吸い込まれるように的に当たった。
「「「「「よし!!!!!」」」」」
ギャラリーズが、的に当たった時のお決まりの発声をする。
一本目は2人とも当たり。二本目
パァン!
パァン!
「「「「「よし!!!!!」」」」」
二本目も2人とも当たり。三本目
パァン!
カッ!
私の矢が的枠をけった。
…ギリギリ、的に入っているのか、それとも外してしまったのか……
ギャラリーズが息を詰めている空気が伝わってくる。
判定は………
当たり外れは、的側にある看的板(かんてきばん)というものに〇・×で表される。看的板が動く。結果は………『〇』
…当たりだ!
これで勝敗は最後の矢にかけられた。
勝負の四本目
無心になり、ただ、的に集中する。
放った
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