私は一生、蛍を見ない
サクッ
パァン!
雷の矢が外れた。
「……ふあぁ〜〜!負っけたあ〜〜ぁ!!」
射位から退出し、詰めていた息を吐き出した途端、雷が悔し気な声をあげた。
「残念だったな〜、雷!」
「明日はリベンジだな!」
ギャラリーズが口々に声をかける。
「明日は雪辱戦じゃあ〜ぁ!この恨み…晴らさでおくべきかぁ〜ぁ…!」
「オイ!そっちから勝負持ち掛けといて、ナンデ私が恨まれんだよ!」
「『再挑戦』と書いて『リベンジ』と…」
「パクリやめぃ!」
部員達が私達のやり取りを見て笑う。
「お前らのコンビっておもしれーよな〜」
「漫才コンビ組めば?」…やっぱ俺も、このおポンチ野郎と同類に見られてる……
…類友漫才万歳……泣泣
「…口惜しいが…負けは負け。侍たる者、潔く負けを認めねば。よし!早速、約定を守らんがため!いざ!伊藤のばーさん宅へ参らん!!」
「…いちいち力の限りに雄叫びあげんなよ……てか、侍たる者って…いーかげん、侍言葉やめぃよ…」
「結構気に入ってるんだけどな、侍言葉。で、約束通り伊藤のばーさんとこに買い出し行くけど、何が欲しい?」
雷が尋ねる。
「私も行く」
「え?約束したんだから、俺がお前の分も買って来るぜ?」
「自分で見て選びたいんだよ。アイス食いたいんだけど、あそこ、結構商品の入れ替えが頻繁だから、今どんなのが売ってるか見てから買いたい」
「なるほど、そーゆーことね」
「おう、行くぞ」
結局、雷と二人並んで伊藤のばーさんとこに向かった。
うちの部は、顧問があまり道場に顔を出さないので、休憩・部活終了時間などは自由である。
伊藤のばーさんの店で、雷はお菓子を私は自分の目でじっくり吟味した上で選んだアイスを購入し、弓道場に戻った。
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